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論文の紹介: ミツバチのダンス言語の 役割を実証する実験

論文の紹介: ミツバチのダンス言語の 役割を実証する実験

庭の花々を訪れるミツバチは、われわれにもっともなじみの深い昆虫の一つであり、果物や農作物のために花粉をはこび、またハチミツを生産してくれる有用な家畜でもある。ミツバチは高度な社会性を有し、組織化された生活を営んでいる。

集団で生活しているミツバチは、ダンスによって蜜源までの距離と方向を仲間に知らせ、仲間のミツバチはその情報に基づいて新たな食料の発見地へと向かう。これはだれもが一度は聞いたことがある有名な話である。いわゆる8の字ダンスである。この仮説は1960年代にドイツの動物学者、カール・フォン・フリッシュ(Karl von Frisch)によって提唱された。彼は、「個体および社会行動様式の組織化とその誘発に関する発見」の業績によってコンラート・ローレンツ、ニコ・ティンバーゲンとともに1973年のノーベル医学生理学賞を受賞している

よく知られているにもかかわらず、この仮説はいままで定量的に実証されていなかった。ここで紹介する論文は、ミツバチがダンスによって蜜源までの距離と方向をどのように知るかを初めて実証した報告である。

この実験には、ハーモニックレーダー(高出力の電波を送出して応答波を受信する装置)と、ハーモニックトランスポンダー(電波を送り返す数ミリグラムの装置)とを組み合わせたシステムが用いられた。まず、人工のえさ場を巣から200m離れた場所に設置した。ミツバチが到達する手がかりにならないよう、えさには人工的な芳香が含まれないようにした。このえさ場に関する情報を仲間から受け取ったミツバチを捕まえてハーモニックトランスポンダーを取り付け、その個体を放した後の飛翔(しょう)経路をハーモニックレーダーで追跡した。

飛翔の軌跡を解析したところ、ほとんどの個体は巣からえさ場を結ぶ直線上を飛んでえさ場のすぐ近くにたどり着いた。正確にえさ場にたどり着けたのは19個体中2個体だけだったが、これはフォン・フリッシュの仮説を否定するものではない。まったく芳香のないえさを使うと、ミツバチはえさにたどり着けないことが多いことが知られている。受け取った情報は正確でも、さまざまな要因で飛翔中に誤差が生じるため、最終的にえさにたどり着くためにはえさから発せられる芳香や色の手がかりが必要なのだろう。

著者らはさらに別の実験を行っている。えさ場の情報を受け取った個体を、巣から200~250m離れた場所に運び、そこで放して飛翔経路を追跡した。その結果、ミツバチは巣からえさ場を結ぶ線と同じ角度の線上を飛び、巣からえさ場の距離に相当する場所で方角を見失った。そして、その周辺をしばらく探索した後、予期した場所にえさ場がなかったため、自分たちが放された場所に戻ってきた。この結果の意味するところは明快であろう。ミツバチは、新たなえさ場までの距離と方角に関する情報を仲間から受け取っているのである。

この研究は、身近な生物に関してさえ、まだ知られていない多くのことがあることを教えてくれる。われわれの住む世界は個々の生物が単に集合したものではない。個々の生物の向こうには、長い年月をかけて進化してきた生物間の関係があり、その生物間の関係は複雑な相互作用によって形成されている。たとえば、ミツバチの採餌(じ)行動はミツバチが生きていくためのものであるだけでなく、植物がほかの個体と交配するための重要なプロセスでもある。この研究の先には、さらに明らかにすべき広大な領域がある。

    
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