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トコジラミの生存を支える共生細菌ボルバキアのビタミンB7合成能力①

遺伝子の水平転移で獲得したボルバキアのビタミン合成遺伝子群

  • ・トコジラミの生存に必須な共生細菌ボルバキアの全ゲノム配列を決定
  • ・他の細菌から水平転移で獲得したビタミンB7合成能力が、宿主の生存を支えている
  • ・衛生害虫として再び問題化しているトコジラミの防除や制御への新技術の開発に期待

 

【概要】

独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)生物プロセス研究部門【研究部門長 田村 具博】深津 武馬 首席研究員(兼)生物共生進化機構研究グループ長、細川 貴弘 共同研究員(国立大学法人 琉球大学博士研究員)、生物共生進化機構研究グループ 森山 実 協力研究員(日本学術振興会特別研究員)は、放送大学、国立大学法人 東京大学と協力して、衛生害虫トコジラミの生存に必須の共生細菌ボルバキア(Wolbachia)の全ゲノム配列を決定し、他の細菌から遺伝子水平転移で獲得したビタミンB7(ビオチン)合成遺伝子群が宿主トコジラミの生存を支えていることを解明した。

 ボルバキアは昆虫類に広くみられる寄生的な共生細菌であるが、今回の研究により、トコジラミとの栄養供給を基盤とした相利共生関係が例外的に成立した進化機構が明らかになった。遺伝子水平転移による寄生から相利共生への進化を実証するとともに、衛生害虫の生存に関わる生理と分子基盤についての新知見である。衛生害虫として世界的に問題となっているトコジラミの防除や制御にも貢献が期待される研究成果である。

 

【研究の社会的背景】

カ、ノミ、シラミ、トコジラミ、ツェツェバエなどの吸血性昆虫は、吸血による痛痒や不快感だけでなく、さまざまな感染症を媒介するため、衛生害虫として大きな問題となる。特に発展途上国では、今なお多くの人々の健康や生存を脅かす重大な社会的負荷となっている。一方で先進国では、重篤な昆虫媒介感染症の多くはほぼ根絶され、1960 年頃までにはシラミやトコジラミなどの古典的な吸血衛生害虫もほとんど見られなくなった。ところが近年、殺虫剤耐性虫の出現や、人的・物的な流通のグローバル化に伴い、これら衛生害虫の再興が大きな問題となっている。特に北米やオーストラリア、日本などの先進国では、近年のトコジラミの発生や被害は、強い不快や嫌悪を伴い、宿泊施設、公共施設、共同住宅などで大問題となりうるため、観光業界、住宅業界、公共機関などにとって無視できないリスク要因である。

 衛生害虫、不快害虫としてさまざまな形で問題となる吸血性昆虫類の防除や制御は、人体や環境に低負荷であることが必須であり、殺虫剤散布などの従来型の制御手法に加えて、新しい害虫制御技術の開発が望まれる。

 

国立研究開発法人産業技術総合研究所HPから抜粋